EPAを利用して日本に輸入する方法について
ここでは、EPA(経済連携協定)等を利用して貨物を日本に輸入する方法についてご案内します。
- 日EU・EPAを利用して輸入する方は、初めて日EU・EPAを利用される方へ(輸入)をご覧ください。
- RCEPを利用して輸入する方は、初めてRCEP協定を利用される方へ(輸入)をご覧ください。
1.はじめに
EPA税率を適用して貨物を日本に輸入するためには、当該貨物に利用するEPA(経済連携協定)等に定める規則を満たす産品=「原産品」であることの確認や、各EPA等に定める手続が必要です。
- 通販貨物、個人輸入貨物、又は中古品の輸入をお考えの方は、それぞれ以下の資料もご一読ください。
2.EPA税率の適用を受けるための流れ
輸入貨物のEPA利用のステップ(PDF;92.8KB)に沿ってご説明します。
- 相手国(仕出国)と日本がEPAを締結しているかを確認
- 輸入貨物のHS番号及び統計細分を特定
- EPA税率が設定されているかを確認
- 適用される原産地基準を特定
- 原産地基準を満たすかを確認
- 輸入面での原産地手続
- EPA税率の適用
- 必要に応じ日本税関からの事後確認(検証)に対応
- 理解を容易にするために、法令とは異なる用語を使用したり、説明を簡略化した部分があることについてご留意ください。
- このページより詳細な解説は、原産地基準・証明手続/様式見本に掲載の参考資料を参照ください。
ステップ0.相手国(仕出国)と日本がEPAを結んでいるかを確認
まず最初に、相手国(仕出国)と日本がEPA等を結んでいるかを確認します。
確認方法
国・地域ごとのEPA等締結状況は、経済連携協定等適用国・地域一覧から確認できます。
ステップ1.輸入貨物のHS番号及び統計細分を特定
この後のステップでは、輸入貨物のHS番号(6桁)及び統計細分(3桁)が必要です。そのため、ここではこれらの番号を確認します。
|
|
確認方法
HS番号(6桁)及び統計細分(3桁)は「実行関税率表」(日本における輸入申告で使用)で調べられます。
- HS番号又は統計細分に関するご相談は、各税関の関税鑑査官部門でお受けしています。
- 輸入予定の貨物のHS番号及び統計細分について、輸入申告の前に税関に対して照会を行い、回答を受けられる関税分類の事前教示制度もありますので、こちらもご利用ください。
- ただし、ご相談又は事前教示制度をご利用の際には貨物のサンプル ・写真 ・原材料 ・加工工程の分かるもの等を提供いただく必要がありますので、あらかじめご了承ください。
ステップ2.EPA税率が設定されているかを確認
輸入貨物について、MFN税率よりも低いEPA税率が設定されているかを確認します。
- MFN税率とは、実行最恵国税率のことで、WTO協定税率など輸入国において一般的に適用される関税率をいいます。
- MFN税率が無税の場合は、EPAを利用せずとも関税無税で輸入できます。(このページの以降のステップは不要です。)
確認方法
日本に輸入するときのEPA税率及びMFN税率は、貨物のHS番号(6桁)及び統計細分(3桁)をもとに「実行関税率表」で調べられます。
ステップ3.適用される原産地基準(原産品の要件)を特定
EPA税率の適用を受けるためには、輸入貨物がEPA等上の原産品と認められる必要があります。まずは、それぞれの協定に定められる「原産品」の要件を確認します。
- これ以降、各EPA等上の表現に合わせて、輸入貨物のことを「産品」と言い換えてご説明します。
- 産品の原産地(=物品の「国籍」)を決定するためのルールのことを原産地規則といい、そのうちどのような産品が「原産品」と認められるかの基準を原産地基準といいます。詳細は原産地基準・証明手続/様式見本をご覧ください。
原産地基準(原産品の要件)の特定方法
- 産品が一次産品(例えば家畜、農作物、水産物)などの場合
- 多くの場合、使用する原産品の要件は「完全生産品」です。
- 何が「完全生産品」であるかは各EPA等の条文で規定されているため、利用するEPA等の条文を参照します。
- 産品が加工品や鉱工業品の場合(「完全生産品」に該当しない場合)
- 使用する原産品の要件は「原産材料のみから生産される産品」又は「実質的変更基準を満たす産品」のいずれかです。一般的に証明負担が軽いの要件から確認し、の要件を満たさない場合に、の要件を確認することがおすすめです。
- の「実質的変更基準」はEPA等毎、さらにHS番号毎に品目別原産地規則(PSR)として規定されています。利用するEPA等の附属書等、又は、品目別原産地規則(PSR)の検索で確認できます。
原産地基準(原産品の要件)の種類
原産品の要件はEPA等によって異なる部分もありますが、基本的には以下1〜3のいずれかの要件を満たすこととされています。
完全生産品 |
|
||
---|---|---|---|
原産材料のみから生産される産品 |
|
||
実質的変更基準を満たす産品(品目別原産地規則を満たす産品) |
|
||
|
|
||
|
|
||
|
|
ステップ4.原産地基準(原産品の要件)を満たすかを確認
ステップ3で特定した原産地基準(原産品の要件)を満たすかについて、疎明する書類とともに確認していきます。
また、産品が原産国から日本に直送されない場合は、積送基準を満たすかについても確認が必要です。
ステップ3で特定した原産品の要件を満たすかを確認
原産品の要件の種類に応じた「確認する内容」と「確認書類の例」は以下の表の通りです。
原産品の要件の種類 | 確認する内容 | 確認書類の例 | |
---|---|---|---|
完全生産品 |
産品や、産品の生産に使用された原材料が全て締約国において完全に得られた産品であることを確認します。 |
|
|
原産材料のみから生産される産品 | 生産に使用された全ての一次材料(産品の生産に直接使用される原材料)が、適用するEPAの規定を満たす原産品(すなわち、原産材料)と認められることを確認します。 |
|
|
実質的変更基準を満たす産品(品目別原産地規則を満たす産品) | 産品のHS番号に係る品目別原産地規則の規定を満たしているかを確認します。 | ||
|
産品のHS番号と、使用された全ての非原産材料のHS番号の間に、品目別原産地規則で定められたとおりのHS番号の変更が生じていることを確認します。特定のHS番号からの変更が除かれている場合もありますので、ご留意ください。 |
|
|
|
品目別原産地規則で定められた特定の生産又は加工の工程が行われていることを確認します。なお、加工工程基準の「化学反応」、「混合及び調合」等については、EPA等毎に定義が定められており、定められた要件を満たしているか確認する必要があります。 |
|
|
|
EPA等毎に定める計算式に基づいて計算を行い、品目別原産地規則で定められた付加価値の基準を満たしているか確認します。 |
|
積送基準を満たすかを確認
積送基準を満たすためには、以下のいずれかが必要です。
- 原産国から日本に直送されること
- 第三国を経由する場合は、産品が税関の管理下に置かれ、行われた作業が積替え、一時蔵置及び産品に実質的な変更を加えない程度の作業のみであること
- 積送基準とは、原産品が輸入国に到着するまでに、原産品としての資格を失っていないかどうかを判断する基準です。
- 詳細は「特恵税率の適用における積送基準について(PDF;446KB)」をご覧ください。
ステップ5.輸入面での原産地手続
各EPA等の「原産品」であることを確認するだけでは、まだEPA税率を適用することはできません。
日本税関に対して「原産品」であることを証明する手続が必要です。
- 原産地手続とは、EPA税率の適用のための手続きのことで、主に以下の2つが含まれます。
- 輸入者が輸入申告時に産品が原産品であることを証明又は申告する手続(ここではこれを原産地証明手続と呼ぶことにします。)
- 輸入国の税関が、輸入者や輸出国政府等に対して質問・検査を行う事後確認手続(ステップ7でご説明します。)
- 原産地証明手続については、原産地基準・証明手続/様式見本もご覧ください。
利用する原産地証明手続の種類を決める
原産地証明手続の種類は大きく分けて以下の3種類です。
原産地証明手続の選び方を参考にいずれを利用するかを決定します。
原産地証明手続の種類 | 左の原産地証明手続(制度)が利用できるEPA等(日本への輸入の場合) | |
---|---|---|
|
|
|
|
||
|
||
原産地証明手続の選び方
原産地証明手続は、利用するEPA等で採用されているものを使用します。ひとつのEPAで複数の制度が採用されている場合は、利用者が自由に選択できます。ただし、各制度によって特徴(メリットや留意点)が異なるため、それらを考慮して適切なものをご利用いただくようお願いいたします。
特に輸入者が原産品申告書を作成する「輸入者自己申告」をご利用の場合は、以下の資料も必ずご確認ください。
原産品であることを証明する書類を準備・作成する
輸入申告時に日本税関に提出が必要な書類とその準備・作成方法は以下の通りです。(通常の輸入申告書類に加えて必要な書類を掲載しています。)
また、産品が原産国から日本に直送されず第三国を経由する場合は、以下の書類に加えて、積送基準を満たす証明のために運送要件証明書の提出も必要です。
原産地証明手続の種類 | 輸入申告時の提出書類 | 準備又は作成方法 | 関連情報 | ||
---|---|---|---|---|---|
第三者証明制度 |
|
|
|||
認定輸出者による自己証明制度 |
|
|
|||
自己申告制度 | |||||
|
以下全て
|
|
|
||
|
以下全て
|
|
|||
- 提出書類の例外(主なもの)
- その1:上記全て(運送要件証明書を含む)の書類について提出を省略できる場合
- 課税価格の総額が20万円以下の場合
- その2:自己申告制度における原産品申告明細書及び関係書類の提出を省略できる場合(原産品申告書(及び、場合により運送要件証明書)の提出は必要)
- 文書による原産地に関する事前教示を取得しているときであって、輸入(納税)申告書の添付書類欄又は事前教示欄に事前教示登録番号を記載している場合
- 締約国内で完全に得られ、又は生産される産品(例:牛肉等の一次産品)であって、インボイス等の通関関係書類によって完全に得られた、又は生産されたことが確認できる場合
- 日EU・EPA及び日英EPAの輸出者又は生産者による自己申告の場合で、輸出者又は生産者が作成した原産品申告書(より具体的には、原産地申告文が記入された商業上の文書)以外に税関に提供可能な情報を輸入者が保有していない場合
- その1:上記全て(運送要件証明書を含む)の書類について提出を省略できる場合
- 事前教示制度(原産地関係)とは、産品の輸入をお考えの方やその他の関係者が、税関に対して、輸入の前に、輸入を予定している産品が原産地規則を満たしているかどうか(EPA等の適用・解釈等)についての照会を文書により行い、税関から文書により回答を受けられる制度です。
- 主なメリット:
- 輸入を予定している産品の原産地、各EPA等のEPA税率(特恵関税)の適用可否等を事前に知ることができ、(適用される税率が事前にわかることから)輸入に係る費用等の計画が立てやすくなります。
- 産品が実際に輸入される際の輸入通関では、事前教示によって、既にその産品の取扱い(原産地)が確定していることから、迅速な輸入申告、産品の早期の引取りができるようになります。
- 税関が発出した回答(教示)の内容については、最長3年間、税関が輸入申告を審査する際に尊重されますので、恒常的に同じ産品を輸入する場合には、安定的な取扱いが確保されます。
- 自己申告制度をご利用の場合は、輸入申告時の提出書類の一部を省略できます。
- 留意点:
- 事前教示は、原則として、文書による照会をしていただき、税関から文書により回答することによって行います。
- 口頭やEメールによる事前教示照会の場合には、上記のメリットは享受いただけません。
- より詳細な内容、利用方法、又はお問合先は以下のリンク先をご覧ください。
- 主なメリット:
- 運送要件証明書とは、積送基準を満たすことを証明するための書類です。具体的にどのような書類を準備すべきかについては、特恵税率の適用における積送基準について(PDF;446KB)をご覧ください。
- 輸出者等から入手した原産地証明書、原産地申告、又は原産品申告書に不備がある場合の取扱いについては、原産地基準・原産地証明手続/様式見本>2-5.不備のある(EPA/GSP)原産地証明書等の取扱いをご覧ください。
原産品に関する書類を保管する
輸入者は、輸入申告の内容を明らかにすることができる資料を保存する必要があります。
さらに、自己申告制度を利用する輸入者は、産品が原産品であることを明らかにする書類を保存する必要があります。
ただし、輸入申告時に税関に提出した書類は保存義務の対象から除かれます。
原産地証明手続の種類 | 輸入者が保存する必要がある書類(輸入申告時に税関に提出した書類は除く) | 保存期間 | |
---|---|---|---|
第三者証明制度 | 輸入申告の内容を明らかにすることができる書類 | 輸入許可の日の翌日から5年間 | |
認定輸出者による自己証明制度 | 輸入申告の内容を明らかにすることができる書類 | ||
自己申告制度 | 輸入申告の内容を明らかにすることができる書類 | ||
|
(上記に加えて)原産品申告書を含め、産品が原産品であることを証明するために必要な全ての記録 | ||
|
(上記に加えて)原産品申告書及び原産品申告書作成者等から提供を受けている産品が原産品であることを証明するために必要な追加的な資料 |
ステップ6.EPA税率の適用
日本税関に対してEPA税率の適用を要求します。
要求方法
- 輸入申告の時に、ステップ5で示した「輸入申告時の提出書類」(及び必要に応じて運送要件証明書)を税関に提出します。
- NACCS(輸出入港湾関連情報処理システム)を使用して輸入申告を行う際、利用するEPA、原産地証明手続の種類等に応じた原産地証明識別コードを入力します。(※)
(※)輸入申告を通関業者に依頼する場合、NACCSへの入力作業は輸入者の依頼に基づき通関業者が行います。
- NACCSの原産地証明書識別コードはNACCS掲示板>業務コード集(NACCS)>共通30原産地証明書識別(外部サイト)から確認できます。
- 以下のEPAについては、原産地証明書識別コード等の入力方法に係る解説資料を掲載していますので、各リンク先から参照ください。
ステップ7.必要に応じ日本税関からの事後確認(検証)に対応
EPA税率を適用した産品について、輸入通関後にその産品が相手国の原産品であるか否かについての確認を日本税関が輸入者に対して行うことがあります。これを事後確認(又は検証)といいます。
輸入者に対する事後確認は、書面での情報提供要請又は輸入者等の事業所を個別に訪問して行う調査(事後調査)により実施されます。税関は、輸入者から提出された資料等に基づき、輸入申告された産品が相手国の原産品であるか否かを確認します。
- 日本税関からの情報提供要請に対して期限内に回答をしない場合や提供された情報が原産品であることを確認するために十分でない場合には、輸入通関後であっても、EPA税率の適用が否認されることがあります。
- 事後確認については、以下の資料もご覧ください。