条件2 RCEP協定締約国内で生産された貨物がRCEP協定上の「原産品」と認められること
原産品の要件(第3・2条)
RCEP協定上の原産品と認められるためには、輸入する貨物について一の締約国において一定の生産が行われていることが必要です。具体的には、生産された産品が以下の(a)〜(c)のいずれかの類型にあてはまることが必要です。
- (a)完全生産品(第3・2条 (a))
- (b)原産材料のみから生産される産品(第3・2条 (b))
- (c)品目別規則を満たす産品(第3・2条 (c))
(a)完全生産品(第3・2条(a))
RCEP協定第3・3条に定めるところにより、一の締約国において完全に得られ、又は生産される産品のことです。
(b)原産材料のみから生産される産品(第3・2条 (b))
一の締約国において一又は二以上の締約国からの原産材料のみから生産される産品のことです。
「原産材料」とは
RCEP協定上の原産品を材料として、一の締約国において他の産品の生産に使用する場合、当該材料を「原産材料」といいます。産品の生産に使用する材料が原産材料と認められるためには、当該材料が以下の(a)〜(c)のいずれかの原産品の要件を満たしている必要があります。
- (a)完全生産品(第3・2条 (a))
- (b)原産材料のみから生産される産品(第3・2条 (b))
- (c)品目別規則を満たす産品(第3・2条 (c))
産品の生産に使用されている「一次材料」が全て原産材料であるものを、 「原産材料のみから生産される産品」といいます。
RCEP協定における「原産品」とは
RCEP 協定では、日ASEAN協定と同様の「国原産品」の考え方を採用しています。例えば豪州で生産した冷蔵庫が原産品と認められる場合には、当該冷蔵庫は「RCEP協定上の豪州原産品」となります。原産性の判断は締約国単位で行われます。
【参考】国原産品と協定原産品
CPTPPでは、締約国域内を一つの国・領域とみなし、締約国域内で生産された産品を協定上の原産品とする「協定原産品」の考え方を採用しています。
(c)品目別規則を満たす産品(第3・2条 (c))
非原産材料を使用して生産される産品であって、附属書3A(品目別規則)に定める要件を満たすもののことです。品目別規則に定める要件には、以下の@〜Bの3つの類型があります。
「非原産材料」とは
産品を生産するために、RCEP協定上の原産品ではない産品を材料として使用した場合、当該材料を「非原産材料」といいます。
品目別規則(附属書3A)とは
非原産材料を使用して生産される産品が原産品と認められるための基準を、HS番号毎にとりまとめたものが品目別規則です。RCEP協定では附属書3Aに規定されています。
※1 品目別規則を満たしたとしても、非原産材料に対する一の締約国における作業が、単純な作業(軽微な工程及び加工)であれば、原産品とは認められません。(第3・6条)
※2 (注)RCEP協定では、協定第3.34条に基づきHS改正の内容を反映するため附属書3Aの置換えが行われます。附属書3Aの置換えであってHS2022改正の品目表による品目別規則はこちらから確認できます。
(参考)原産品であることの証明負担の軽減について
「(b)原産材料のみから生産される産品」であることを示すためには、使用している全ての一次材料について、原産品であることの証明が必要となります。
一方で、一次材料の全てについて原産品であることを証明するよりも、「(c)品目別規則を満たす産品」にあてはまることを示す方が、証明負担が軽い場合も考えられます。
(例)タイで生産される「野菜の酢漬け」(HS番号第2001.90号)に、RCEP協定の特恵税率を適用して輸入したい。
方法@
当該野菜の酢漬けが、「(b)原産材料のみから生産される産品」としてRCEP協定上のタイ原産品であることを示すためには、全ての一次材料(きゅうり・玉ねぎ・にんじん・食塩・食酢)が原産材料(=RCEP協定上の原産品)であることが必要であるため、それを示す情報(書類)が必要となる。
方法A
材料の全てについてタイの非原産品であるとみなした場合(※)、それらの材料が全て品目別規則を満たせば、当該野菜の酢漬けは「(c)品目別規則を満たす産品」としてRCEP協定上のタイ原産品であると認められる。
(※)原産材料であることを示す情報があっても、非原産品とみなすことが可能。
方法Aでは、産品と材料のHS番号との間にCC(類レベルでの変更)が起きていることが原産品であるための要件。そのため、産品と全ての材料のHS番号を特定することにより、当該事実を示すことが必要だが、方法@のように全ての材料が原産材料であることを示す情報は必要ない。
(結論)
どちらの方法を適用しても、RCEP協定上のタイ原産品と認められるのであれば・・・
方法@:(b) 原産材料のみから生産される産品
方法A:(c) 品目別規則を満たす産品
→負担がより軽い方を選択して証明すればよい。
(参考)関税分類変更基準を検討するときのHS番号について
「関税分類変更基準」とは、一の締約国での生産によって、非原産材料のHS番号と、その材料から生産された産品のHS番号が一定以上異なることとなった場合に、産品を原産品と認めるというものです。
しかし、関税分類変更基準を満たすことを示すにあたっては、材料のHS番号は必ずしも「号」(6桁)まで特定する必要はありません。類(上2桁)や項(上4桁)まで判明すれば十分な場合もあります。
(例)
中国で生産される「食品添加物」(HS番号第2905.32号)に、RCEP協定に係る特恵税率を適用して輸入したい。
非原産材料が使用されていることから(または、材料が非原産材料であるとみなした場合には)、産品(食品添加物)がRCEP協定上の中国原産品と認められるためには、品目別規則を満たす必要がある。
【RCEP協定 品目別規則 第2905.32号:CTSH又はRVC40】
上記の品目別規則に規定されるいずれかの要件を満たせば原産品と認められるが、以下では「CTSH」を検討する。
(注)CTSH: 産品の生産に使用された全ての非原産材料について号(6桁)の変更が行われること
この例では、全ての非原産材料に号の変更が行われているか確認する必要がありますが、当該非原産材料については、
(1) 第29類に属するものではない場合には、2桁までの特定で十分です。(例:第28類であることが特定できれば十分)
(2) 第29類に属するものである場合であっても、第29.05項以外である場合には、4桁までの特定で十分です。
(例:第29.01項であることが特定できれば十分)
(3)しかし、第29.05項に属するものである場合には、号(6桁)まで特定しなければ、非原産材料と産品との間で号変更が起きていることが
わからないことから、号まで特定する必要があります。
(例:第2905.45号であることまで特定が必要)