(3) コカイン

   世界的傾向

(要旨)

        南米は、引き続き最大のコカイン生産地域であり、原料となるコカ葉の殆どがコロンビア、ペルー及びボリビアの3カ国で不正栽培されている。摘発数量では大部分のコカインが船舶又は海上貨物を利用して北米地域及び欧州地域等に密輸されている。摘発件数では航空旅客によるものが最も多く、航空貨物を利用する事犯は減少している。

 

(摘発状況)

2000年におけるコカインの総摘発数量は前年比18.6%減の172,572キロ(コカイン135,777キロ、コカインベース1,316キロ、コカ葉35,479キロ)であった。コカインの摘発数量の割合を地域別に見てみると、アメリカ地域が89.3%、欧州地域が9.9%を占めている。全摘発数量に占める割合を国別に見てみると、米国が45.4%、ベネズエラが7.1%、チリが5.2%、コロンビアが4.1%、オランダが2.3%となっている。

2 密輸ルート

 

             地域別密輸傾向等の概要

(欧州地域)

        2000年における欧州地域でのコカインの摘発数量は大幅に減少し、1991年にWCOが統計を取り始めて以来最も少ない13,423キロ(前年比54%減)となった。摘発数量が減少した要因としては、中南米やカリブ地域で行われた国際的なコカイン摘発プロジェクトを通じた欧州地域及び米国向けコカイン約23トンの摘発等の成果もあり、欧州各国へ密輸されるコカインの第一の持ち込み地となっているスペインでの摘発数量が約11.3トンから約1.4トンへと激減したことが挙げられる。

        欧州地域で摘発されたコカインのうち、約3トンがコロンビアを仕出地とし、ベネズエラ及びペルー仕出しがそれぞれ約2トン、パナマ及びブラジル仕出しがそれぞれ約1トンとなっている。

        航空旅客によるコカイン密輸は、欧州での摘発件数ベースで56%(1206件)、摘発数量ベースで30%(約4トン)を占め、スペイン及び英国が主要な持ち込み地となっている。

(アメリカ地域)

        南米地域は、唯一のコカイン生産地である。コロンビアは引き続き世界最大のコカイン生産国であり、ペルー、ボリビアがこれに続く。ペルーとボリビアにおけるコカ栽培は近年減少傾向にあるものの、コロンビアでは増加しているため、コカインの原料であるコカ葉の供給は安定している。UNDCPの報告によると、2000年には800トン(推計)ものコカインが生産された。

        アメリカ地域全体での摘発数量は前年比9%減の121,279キロ(3499件)であった。

        米国は世界最大のコカイン消費国であり、2000年には前年比22%増の約78トン(2623件)のコカインを摘発した。米国における摘発数量の40%は南米から直接密輸されたものであり、前年多く使われた中米及びメキシコを経由するルートは20%にとどまった。カリブ地域を経由するルートは全体の30%を占めている。米国での摘発を輸送手段別に見ると、約38トンが海上、約16トンが陸上、約4トンが航空となっている。

        カナダでは2000年に約1.4トン(211件)のコカインが摘発されており、そのほとんどが南米を仕出しとするカリブ地域経由の航空旅客によるものであった。

        南米におけるコカインの摘発数量は、前年比約2倍の約29.6トン(279件)であった。これはコロンビアやペルーでの摘発が減少した代わりに、ベネズエラやチリにおいて、商業船舶を使って欧州及び北米向けの大口事犯の摘発が急増したためである。

        ベネズエラでは前年比3倍強の約12.3トンのコカインが摘発された。この大幅な増加は、ベネズエラがコロンビアの麻薬組織を壊滅する為の2年間にわたる国際プロジェクトに参加し、約8.8トンものコカインを摘発したこと等によるものである。同プロジェクトは12カ国の関係当局によって実施され、価格にして10億米ドル相当の23トン以上のコカインを摘発する等の成果をあげている。

        ベネズエラ、ペルー、パナマ及びブラジルは、米国向けだけではなく、欧州やアフリカ等に向けて密輸される南米産コカインの積み出し地となっている。

(中近東地域)

        中近東地域ではコカインはあまり蔓延していない。2000年の地域全体での摘発数量は41キロであった。

        イスラエルへのコカイン密輸が増加傾向にあり、また南米から欧州向けコカインの密輸中継地として利用され始めている。

(アフリカ地域)

        2000年のアフリカ地域におけるコカインの摘発数量は、7キロ(4件)であった。同地域における摘発はごくわずかだが、コカイン密輸の中継地としてアフリカに関連する事犯が南米及び欧州において相当数報告されている。

        アフリカ人の運び屋は、引き続き世界的なコカイン密輸に深く関与しており、2000年には地域内12カ国のアフリカ人が逮捕されている。

(アジア・大洋州地域)

        アジア・大洋州地域における2000年のコカインの摘発数量は前年の5倍となる約1.0トン(39件)となった。

        アジア・大洋州で摘発されたコカインのほとんどが豪州で摘発されたものであり、豪州はコカイン密輸グループのターゲットとなっていることが窺われる。2000年2月には税関と警察の共同捜査により、同地域での一事犯としては最多となる約500キロのコカインが摘発されている。

        南太平洋の島嶼国がコカイン密輸の中継地として利用され始めている。