IV.世界における不正薬物等の密輸動向等

 

 

1.不正薬物(世界税関機構(WCO)の資料等に基づき作成)

(概況)

世界税関機構(WCO)に報告された2000年(1〜12月中)の世界各国の税関等における不正薬物の摘発数量を薬物別に見てみると、引き続き大麻草(759.8トン)が最も多く、次いで大麻樹脂(419.4トン)、コカイン(135.8トン)、ヘロイン(11.5トン)、あへん(8.7トン)、MDMA(7.1トン)、覚せい剤(5.8トン)、モルヒネ(1.1トン)となっている。数量ベースでは、合成麻薬、特にMDMAが前年比1.8倍の増加となったことが特筆される。

不正薬物の密輸形態を数量ベースでみると、「船舶又は車両への隠匿」が大半を占めるが、件数ベースでは、「航空旅客の利用」が多くなっている。また、「郵便物」、特にEMSを利用した密輸手口がより頻繁に利用されはじめており、2000年には3トン以上の不正薬物が郵便物から摘発された。

不正薬物の密輸ルートは引き続き多様化・複雑化しており、従来とは異なる国が不正薬物の密輸中継地として使われ始めている。加えて、薬物の密輸中継地での国内乱用が引き続き拡大する傾向が継続している。

 

(1)  あへん系麻薬

1世界的傾向

(要旨)

        あへん系麻薬の主要な生産地は、南西アジアのアフガニスタン、パキスタン、イラン及びその近隣諸国と東南アジアのタイ、ミャンマー及びその近隣諸国である。

        国連麻薬統制計画(UNDCP)の報告によれば、2000年の世界の違法なあへんの生産量(推計)は、ピークとなった前年の約5,700トンから約4,700トンに減少した。これは、主要生産国であるアフガニスタンでの悪天候とタリバン(注)の禁止令に基づく作付面積の縮小により、あへんの生産量(推計)が前年比で28%減少したことに起因する。

(注)

タリバンとは、アフガニスタンを実効支配するイスラム原理主義勢力。2000年7月、タリバンの最高指導者オマル師が厳しい罰則を含むけし栽培の全面禁止を布告した。

        あへんからヘロインへの精製のほとんどがアフガニスタンで行われているが、密輸ルートの途上にある国で行われているものもある。

        アフガニスタンからトルコ、イラン等を経由して西欧地域にヘロインを運ぶ「バルカン・ルート」が多用されている。

 

(摘発状況)

<あへん>

2000年における総摘発数量は、8,774キロ(前年比約30%減)であった。地域別の割合では、中近東地域が53.2%、アジア・大洋州地域が26.7%、欧州地域が11.3%、アメリカ地域が8.8%となっている。

 

(注)以下のグラフの数字については、WCOデータベースに報告された世界各国の税関等による摘発件数及び数量のみを計上したものである。

 

<モルヒネ>

2000年における総摘発数量は、イラン及び中欧、東欧における摘発が増加したこと等により、前年比約4.5倍の1,088キロであった。地域別の割合を見てみると、中近東地域が82.1%、欧州地域が14.5%、アジア・大洋州地域が3.3%を占めている。

 

 

<ヘロイン>

2000年の総摘発数量は、前年比5%増の11,552キロであった。地域別の割合では、欧州地域が65.4%、アジア・大洋州地域が18.7%、アメリカ地域が14.2%、アフリカ地域が1.1%を占めている。全摘発数量に占める割合を国別に見てみると、ブルガリアが14.1%、イギリスが12.4%、米国が11.5%、ハンガリーが6.3%、インドが5.2%となっている。

 

  密輸ルート

 

        密輸傾向等の地域別概要

(欧州地域)

        西欧地域は依然としてヘロインの最大のマーケットとなっている。欧州地域全体におけるヘロインの摘発数量は、前年の約6.4トンから約7.5トンに増加した。

        欧州地域に密輸入されるヘロインの大半は南西アジアを仕出しとし、「バルカン・ルート」を経由して持ち込まれている。同ルートを経由して輸送されたヘロインの摘発数量は約4トンであった。特に同ルートの欧州地域への入口にあたるスロベニア、ギリシャ、ポーランド、ブルガリア等での摘発が増加している。

        西欧地域への密輸ルート上にある中央・東欧地域諸国におけるヘロインの国内乱用が大きな問題となっている。

(アメリカ地域)

        北米地域におけるあへんの摘発数量は引き続き増加しており、米国だけでも766キロのあへんが摘発されている。

        米国は主要なヘロイン消費国であり、米国司法省は国内の年間消費量を約18トンと推計している。米国に密輸されるヘロインの75%がコロンビアやメキシコを仕出しとするものであった。

        コロンビアにおける不法なけし栽培は拡大しており、それを基に生産されるヘロインのほとんどが直接或いは中米諸国やカリブ海諸国を経由して米国に密輸されている。

(中近東地域)

        中近東地域におけるあへんの摘発数量は4,672キロであり、全世界の総摘発数量の53%を占めている。

        イランは、アフガニスタンから西欧地域へ密輸されるあへん系麻薬の中継地となっており、約4.6トンのあへん(98件)、893キロのモルヒネ(8件)を摘発している。

        湾岸地域、特にアラブ首長国連邦は、南西アジアを生産地とするアフリカ向けヘロインの密輸中継地として利用されている。

(アフリカ地域)

        アフリカ地域で摘発されたヘロインは129キロであり、そのほとんどがパキスタンを仕出しとするものであった。アフリカ地域は依然として南西アジアを仕出しとする欧州または米国向けヘロインの密輸中継地となっており、特に、南西アジアの密輸グループはアラブ首長国連邦を経由し、ケニアとコート・ジ・ボワールで中継するルートを利用している。

        ヘロインの運び屋として、アフリカ人が多用されている。

(アジア・大洋州地域)

        UNDCPの報告によれば、2000年に全世界で違法に生産されたあへん(約4,700トン)のうち、69%がアフガニスタンで、23%がミャンマーで生産されたとされている。

        アジア・大洋州地域におけるあへんの摘発数量は、アフガニスタンでの生産量が減少したこと等の理由もあり、前年比54%減の約2.3トンであった。同地域における摘発数量は、全世界における総摘発数量の27%を占めている。

        アジア・大洋州地域におけるヘロインの摘発数量は前年比30%減の約2.1トンとなった。

        アジア地域は、依然として世界市場へのヘロインの主要な仕出地である。タイ、ミャンマー、ラオスにまたがる一帯、いわゆるゴールデントライアングルから中国、香港を経由するルートが依然として主要な密輸ルートとなっているほか、従来のタイ、インド、パキスタンを経由する密輸ルートも利用されている。

        ヘロインの運び屋として、パキスタン人、香港人、インド人等が群を抜いて数多く利用されている。