織物の分析「天然繊維か?化学繊維か?」
私たちが普段着ている服の素材は、天然繊維と化学繊維に分かれます。
天然繊維と化学繊維の違い
天然繊維は、麻、綿のように植物を利用したもの(素材はセルロース)や絹、羊毛、獣毛など動物を利用したもの(素材はたんぱく質)です。特徴として、(1)形状が一定でない、(2)酸、アルカリには弱いが有機薬品(たとえば、アセトン、メタクレゾールなど)には強い、が挙げられます。
化学繊維は、おもにプラスチックを利用した合成繊維(たとえば、ナイロン、ポリエステル、アクリルなど)や、天然繊維を薬品処理して作った再生繊維(レーヨン、キュプラ)です。特徴として、(1)形状が一定なものが多い、(2)合成繊維は酸、アルカリに強く、再生繊維(アセテートを除く)は有機薬品に強い、が挙げられます。
【素材がわからない織物は・・・】
上記のような繊維の性質の差を利用して、どの繊維がどれだけ入っているかを調べることができます。
たとえば、ポリエステルと綿からなる織物では、70%硫酸を加えると綿は溶けますがポリエステルは溶けません。そこで、残った繊維分を測ることによりポリエステルと綿の混合割合がわかります。つまり、いろんな繊維を使った織物も、硫酸などの薬品を加えることにより、その量を測ることができます。
【試験をしてみましょう。】
ここに素材が不明な織物があります。天然繊維か化学繊維なのか、硫酸を使って試験をしてみましょう。
1. 織物の切れ端をフラスコに入れます。
2. 硫酸を入れて振り混ぜます。
3. 織物はすべて解けてしまいました。
硫酸(酸)に溶けたことから、織物は綿(天然繊維)だとわかります。
【化学的に同じ素材でも・・・】
たとえば、木綿とレーヨンは、もとはどちらもセルロースです。化学分析だけでは両者を区別することはできませんが、電子顕微鏡で観察するとその違いは明らかです。
【電子顕微鏡で見分けられます。】
▲木綿
▲レーヨン
木綿はよじれて形状が一定ではありませんが、レーヨンは繊維方向に線が見え、形状も一定です。